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大工職人と自転車


(その2)


ウチに働きに来ていた配管工は、会社についてから作業服に着替えていました。
自転車通勤の格好は、なかなかお洒落で、小奇麗にしていました。
考えるに、往き返りの途上で女子高校生の大群とすれ違うから、ルックスを気にしていたのかな? 米寿も過ぎたおじいちゃんだったけど……。

彼は私の推薦で、叙勲を受けたのですが、その推薦理由が、
「Fさんは、雨にも負けず、風にも負けず、自転車で誰よりも早く出社し続けました。その仕事における姿勢は、まさに建設業界人の鑑といえます」と、言うものでした。

雪には、簡単に負けてましたが……。
深酒にも、当然のように負けていましたが……。

秋田県内でたった二人の叙勲でしたが、通常はどの業界でも、創業者などお偉いさんが推薦されるのが通例なので、なぜ彼がと不思議がられました。
理由は簡単です。私が本物の勲章とも思わずに(文面をよく読まずに)、単なる功労者の表彰だろうくらいの簡単な気持ちで、とりあえず一番のお年寄りを推薦したからなんです。

自転車通勤のおかげで、受勲した人は珍しいと思います。

おじいさんは、勲章の授与のため皇居に呼ばれて、初めて事態の大きさに気付き、直前に出席をドタキャンしました。(燕尾服買わなきゃいけないと思ったんだろうな)
業界団体の理事長からも、県の役人からも、前代未聞との嫌味を言われて、なお私は、(たかが、優良社員の表彰くらいで大騒ぎして……)と、勘違いしておりました。
その後、県庁内で彼一人のために何人ものお偉い方々が立ち並ぶ中、授与式が行われ、雇用者として参加させられた私は、その頃になってようやく、(何か本物の勲章みたいだぞ)と、自分の勘違いに気付いたのでした。


2005,1,31
住まいの知恵袋』KIBA様

☆☆☆☆☆
 (その2)
 ううう……こ、これはやばいんでないかい?(^^;)
 なんとも……こっちが逃げ出したくなってしまいましたがな。

 今回のこのKIBA氏の原稿は、僕の「自転車絡みでなんか原稿くれ!」というおねだりに、「そんなら」と応じてくれたものなのでしたが、実はここに発表する前に、別のメンバー制の掲示板に先に公開されてしまって、それで僕は頭かかえてしまいました。なんとか転載の許可をもらって、ようやくこのページでの公開にこぎつけたのでした。なんでそんな苦労したかというと、だってめちゃくちゃおもしろいんですもの。氏はその掲示板の人気者で、その圧倒的なオモシロヤバイ内容の文章で、周囲をビビらせかつハラの皮をよじらせています。おもしろいでしょ? もっと読みたいなーと思ったら、お願いしたらまた書いてくれるかもしれません。

 KIBAさん、どうもありがとうございました。

 


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